ニューヨークから帰った私は昭和39年7月、村本さん、秋元さんのお口添えで本職の渡邊三郎先生に師事する事となり、渡雲会に入門させていただいた。
それ以来今日まで43年余りを経過したが、振り返るとさまざまな想い出が浮かんでくる。
・ 始めて能に出演させていただいたこと。
・ 嘱託免状をいただいたこと、
・ 仕舞を習い始めたこと、仕舞で立ち往生したこと、
・ 舞囃子も始めたこと、
・ 稽古の厳しかったこと、
・ 記念誌に何か書いたこと、
・ 「勧進帳」を謡わせていただいたこと、
・ 中山会長のこと、斎藤基房さんのこと、
・ 村本脩三さんのこと、八角菊栄さんのこと、
・ 渡雲会催会番組抄録を何回か作ったこと、
・ 大会の会計のお手伝いをしたこと、
・ 幹事長を仰せつかったこと、
・ 記念誌「渡雲」を作成したこと等々。
主要なものを「渡雲会での主要年表」としてまとめてみた。やはり能や舞囃子の思い出が多く、次いでいろいろの資料を作った思い出が多いようである。
また、古い記録を取り出してみたところ、いろいろの形で思い出を記しているので、これらを紹介しながら思い出を語ることとしたいので、まとまりがなく重複しているところもあって恐縮ながら、興味のもてそうなところを少しでも見ていただければ幸いである。
◯ 記念帳への投稿
渡雲会では25周年記念の時から5年毎に記念帳を作成してきている。そのうち
・ 60周年記念誌(平9.8)に 「能「七騎落」のシテを仰せつかって」
・ 65周年記念誌(平14.6)に「私と渡雲会」
・ 70周年記念誌(平19.6)に「祝辞」
の3編を寄稿している。
◯ 謡舞観巡別冊2 渡雲会四十年回顧(平15.5)
45年間の渡雲会の思い出をB5版約170頁にまとめ、先生と中山会長に贈呈したものであるが、その中から、「まえがき」および「渡雲会関係思い出の片々」 63件中、自分で演じた能・舞囃子や、中山会長、斎藤基房さん、秋元亮一さん、八角菊栄さんの想い出、嘱託披露、追善の曲「江口」の思い出など23件を抜粋紹介する。
◯ 渡邊三郎先生米寿記念誌「渡雲」(平17.10)
「四十年回顧」として、猩々と渉り拍子、中山会長のこと、能「七騎落」、村本脩三さん・秋元亮一さん、斎藤基房さんと安宅を収録しているほか「あとがき」
◯ 能「田村」とその周辺(平3.6) 能「七騎落」とその周辺(平9.8)
能「田村」と「七騎落」のシテを仰せつかった時、観に来てくれる方にお配りするため、これらの小冊子を作った。能の解説と訪ねた謡蹟を紹介したものである。
◯ 「渡雲会催会番組抄録」(平4.6、平9.6、平14.6、平19.6)
平成4年、55周年記念の時、先輩たちの渡雲会における足跡を知りたくて、渡雲会の例会の開催記録、先生の演能の記録、先輩の能や舞囃子の記録などを調べ1冊にまとめた。その後も5年ごとの記念大会の時に続編を作成してきた。
個人別の出演記録もつけてあるので、渡雲会における自分の出演記録がすぐ分かるようにしてある。4冊分をつなぎあわせて私自身の、能、舞囃子、仕舞、素謡・連吟・独吟の一覧表を作成してみた。
以上、私が長年の間に書き上げた資料によって思い出を語らせてもらったが、ここに書ききれない思い出も沢山ある。比較的若い頃に謡の道を教えてもらい、良い先生方に恵まれて、会社を定年退職した後も退屈することなく充実した生活を送ってこれたのは謡曲のおかげと感謝している。
渡邊先生は現在卒寿(90歳)を迎え、昨年6月には、渡邊三郎先生卒寿・渡雲会70周年記念大会の快挙を成し遂げられた。現在、視力、聴力は衰えているものの、なお謡については私達弟子に直接稽古をつけておられ、仕舞についても柏山聡子先生の指導を見守りながら適切なアドバイスをしておられる。私ももちろん毎月稽古に通っている。
ただ今年(平成20年)に入ってすぐの1月5日、奥様が逝去されたのはショックであった。お正月早々でもあり、また1月12日には神谷舞台で初会を開催する予定で準備万端整っていた時でもあったので、幹事長の私は初会中止にともなう善後措置と葬儀の連絡、そのうえ弔辞を読む大役まで仰せつかってまことに慌ただしいことであったが、会員の皆さまに助けられながらなんとかその任を果たすことが出来ホットしている。
渡邊三郎先生 近影
先生御夫妻 叙勲記念祝賀会 パレスホテル (平成1.7)
先生御夫妻 金婚祝い ストラーダ新宿 (平成6.6)
渡邊三郎先生より今回の能のシテ役をつとめた方々を紹介 東京会館 (平9.8)
壇上左より、古瀬孝司(猩々) 高橋春雄(七騎落) 赤井修子(葛城後) 石尾節子(葛城前) 澤辺弘(俊寛) 渡邊三郎先生 古谷浩昭(俊成忠度) 広中ミドリ(東北) 内野シズヨ(船弁慶前) 御馬舎裕子(船弁慶後)
テープル席左より、宗家宝生英照先生 大谷龍祐氏(宝生会専務理事) 今井泰男先生
渡雲会70周年記念祝賀会で挨拶すう渡邊三郎先生
東京ドームホテル オーロラ (平成19.6)
「日々是好日」 −高橋春雄・私の履歴書−