資料   「宝生流教授嘱託会 40年間の謡曲名所めぐり実録」より
     (平成18年10月)

              ま え が き



宝生流教授嘱託とは、宝生流謡曲の教授を宝生宗家から委嘱された人、つまり宗家からお弟子をとって教えてもよいという免状をいただいた人のことです。この人たちが今から50年前の昭和30年に「宝生流嘱託会(現在の宝生流教授嘱託会)」を結成しました。現在、日本全国で約2,400名の会員が活躍しております。


 この会では全国に支部の組織があり、各支部大会、地方大会、全国大会、夏期講座等種々の行事を実施しておりますが、昭和43年から毎年謡曲名所めぐりを実施しております。年2回の時もあって今年で40回目となりました。北は東北の青森から南は九州の鹿児島まで、全国各地を訪ねております。日帰りの時もありますが、最近では2泊3日が通例になっています。


日本全国には謡曲に関する名所や史蹟は無数と言ってもよい位に沢山あり、それを紹介する本も沢山出ておりますが、しかし、これらの内何処が必見の場所か迷う方も多いのではないかと思います。

また、ある程度まとまった人数で訪ねようとすると、車やバスが通れるか、年配の方に無理はないか,昼食や宿泊に適当なところがあるか、等いろいろ知りたい方もいることと思います。


その点、本書に掲載のコースは、その当時の幹事の方々が事前に綿密に調べ、旅行業者とも打合せ、大型バスを使い、多くの年輩の方の参加を得て、40年間に亘って実施して来たコースばかりです。

  中には当時の面影を留めていない史蹟もあるかも知れませんが、それほど大きな変化はないと思いますし、さらに交通事情などは当時より良くなっていますので、今でも十分お役に立つものと存じます。


全国の謡曲愛好家の皆さま。謡曲を謡っていても、能を観ていても、その曲の舞台となった所を自分の目でみていると否とでは大違いです。その曲を謡いながら、また、聞きながら、自分が訪ねたところの光景を思い浮かべ、さらにその曲のお役の方々、往時の有様を偲んで下さい。その曲に対する興味が一層強くなること必定でございます。


謡蹟めぐり、その立案に本書が少しでもお役に立てば幸いでございます。



         平成18年10月 

                宝生流教授嘱託会  東京支部  高 橋 春 雄


 

              目    次


まえがき

目  次


第1回 埼玉県下謡曲名所めぐり ・・・・・・・・・・・・・ 2

    守光院 満蔵寺 熊谷寺 実盛の館跡 忠度塚 

    岡部六弥太の墓

第2回 高崎謡曲名所めぐり ・・・・・・・・・・・・・・・・ 6

    定家神社 常世神社 船橋の碑 頼政神社 白衣観音 

    慈眼院 落合簗

第3回 熊野寺参詣 浜名湖周辺 謡曲名所めぐり ・・・・・・10

    小夜の中山 熊野寺 龍潭寺 井伊谷神社 方廣寺 

    本興寺 汐見坂・高師山 新居の関所跡

第4回 桜川探訪 筑波・足尾・加波 三山山麓周遊 ・・・・・14

    小田 青柳の糸桜 桜川磯部稲村神社 月山寺 

    笠間稲荷 笠間焼窯元

第5回 道成寺・熊野三山めぐり ・・・・・・・・・・・・・・18

    玉津島神社 道成寺 潮岬 青岸渡寺・熊野那智大社・

    那智の滝 熊野速玉大社 熊野川を上る 熊野本宮大社 

    湯の峯荘 鬼ケ城 花の窟 

第6回 曽我兄弟の故郷 曽我の里・箱根 ・・・・・・・・・・24

    城前寺 別所の梅林 箱根神社 曽我兄弟と虎御前の

    供養塔 正眼寺

第7回 佐渡紀行 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・28

    本間舞台 佐渡金山跡・尖閣湾遊覧 正法寺 長谷観音 

    妙宣寺 大膳神社の能舞台 順徳天皇火葬塚 蓮華峰寺 

    南仙峡遊覧 直江津湊へ

第8回 大和路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34

    大和三山 大神神社 山の辺の道 玄賓庵 檜原神社

    「宝生流発祥之地」碑 長谷寺 当麻寺 万福寺 平等院

第9回 みちのくの旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・42

    遊行柳 二所明神 白河関跡 黒塚 医王寺 文字摺石

    白水阿弥陀堂 勿来の関 

第10回 湖国めぐり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・46

    彦根城 竹生島 日吉大社 三井寺 義仲寺 石山寺

第11回 奥羽路めぐり(秋田県・青森県) ・・・・・・・・52

    小町堂 小町まつり 田沢湖,八幡平 錦木塚 弘前城

    久須志神社・善知鳥神社 

第12回 山陰路めぐり ・・・・・・・・・・・・・・・・・56

    鳥取砂丘 日御崎灯台 出雲大社 松江城 武家屋敷

    小泉八雲旧宅及び記念館 明々庵 月照寺 八重垣神社

    菅田庵 美保関神社、関の五本松

第13回 晩秋の埼玉路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・62

    満蔵寺 稲荷山古墳 妻沼聖天 三峰神社 鎌形八幡宮

第14回 栃木路めぐり ・・・・・・・・・・・・・・・・・66

    福田製紙所・和紙会館 東山雲厳寺 殺生石 南ケ丘牧場

    遊行柳 那須国造碑 塚本製陶工場

第15回 高野山参拝 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・70

    慈尊院 御影堂(三鈷の松) 金剛峰寺 奥の院 

    遍昭尊院 楠妣庵 観心寺

第16回 三河路めぐり ・・・・・・・・・・・・・・・・・74

    桶狭間古戦場 無量寿寺 野間大坊 長篠城址 

    蓬莱寺山 豊川稲荷 

第17回 葵祭 雨に煙る洛北紀行 ・・・・・・・・・・・・78

    葵祭(下鴨神社) 寂光院 三千院 鞍馬寺 貴船神社

    小町寺(補陀落寺) 上賀茂神社 羅城門跡

第18回 南九州 「景清」の古蹟参観 ・・・・・・・・・・84

    高千穂丸 夜神楽・高千穂神社 高千穂峡 天岩戸神社

    都万神社、桜川、無戸室碑、石貫神社 男狭穂塚、女狭穂塚

    生目神社、景清廟 青島神社 鵜戸神宮 飫肥城址 

    高千穂の峰 霧島神宮 桜島 磯庭園

第19回 甲斐路めぐり 「鵜飼」発祥の地参観 ・・・・・・92

    遠妙寺 実相寺 万休院・舞鶴松 昇仙峡 金桜神社 

    身延山、久遠寺 白糸の滝、音止めの滝

第20回 北陸路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・96

    瑞龍寺 前田利家公墓所 高岡能楽堂 雨晴し 阿尾城址

    藤波神社 国泰寺 埴生八満 大野湊神社 全性寺 

    本多蔵品館 白山比盗_社 那谷寺 実盛塚 首洗池 

    多太神社

第21回 近江路 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・106

    泉湧寺 今熊野観音寺 随心院 月心寺 蝉丸神社  

    逢坂関 日吉大社 横川中堂 延暦寺 近江神宮 

    三井寺 義仲寺 石山寺 祇王寺 多賀大社 竹生島

第22回 紀州・熊野路の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・116

    高津宮跡 四天王寺 住吉大社 仁徳天皇陵 蟻通神社

    玉津島神社 新和歌ノ浦 得生寺 道成寺 橋杭岩 

    那智大社 青岸渡寺 熊野本宮大社 熊野速玉神社

    徐福の墓 

第23回 大和路の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・126

    石清水八幡宮 奈良東大寺 春日大社 興福寺薪能 

    在原寺 長谷寺 外山宗像神社 淡山神社 三輪明神 

    吉野浄見原神社 如意輪寺 勝手神社 吉水神社 

    蔵王堂 一言主神社 当麻寺 面塚 大和西大寺

第24回 摂津・讃岐路の旅(源平合戦の跡を弔い・二大橋を渡る)138

    処女塚古墳 生田神社・生田森 湊川神社 願成寺 

    須磨寺 松風村雨堂 おのころ神社 淳仁天皇御陵 

    鳴門大橋 金刀比羅宮 善通寺 瀬戸大橋 藤戸寺

第25回 駿河・伊豆・相模路の旅 ・・・・・・・・・・・・152

    日本平 三保の松原 興津清見寺 曽我遺跡・白糸の滝 

    曽我寺 修禅寺 月桂殿 三嶋大社 箱根神社 

    駒ヶ岳展望台 箱根関所跡 大観山展望台 藤沢遊行寺 

    満福寺 盛久頸座碑 明月院 鶴岡八幡宮 頼朝墓 幕府跡

第26回 遠江から美濃路への旅 ・・・・・・・・・・・・・162

    焼津神社 行興寺 千手墓 豊川稲荷 竹島弁天 

    華蔵寺 法山寺 野間大坊 常福寺 無量寿寺 赤坂宿跡 

    円興寺 熊坂物見の松跡 養老の滝 関ヶ原(野上の長者

    邸跡 古戦場)

第27回 下野から羽前への旅 ・・・・・・・・・・・・・・174

    法輪寺 笠石神社(国宝那須国造碑) 玉藻前稲荷神社

    佐藤継信忠信供養塔 殺生石・温泉神社 遊行柳 

    金売吉次墓 白河関跡 釆女塚 黒塚・観世寺 信夫文知摺 

    医王寺 上杉神社 上杉家廟所 法音寺 蔵王山越 

    青葉城址 瑞鳳殿

第28回 陸前から陸奥への旅 ・・・・・・・・・・・・・・188

    毛越寺 義経堂 平泉館跡 中尊寺 金色堂 弁慶堂 

    弁慶の墓 高村記念館 宮沢賢治記念館 錦木塚展示館 

    大湯環状列石 十和田湖 奥入瀬渓流 睡蓮沼 

    棟方志功記念館 善知鳥神社

第29回 越前・若狭・丹後・丹波への旅 ・・・・・・・・・198

    紫式部公園 花筐公園 和紙の里公園 味真野神社・

    味真野苑 気比神宮 世阿弥船出之地記念碑 

    蘇東門めぐり遊覧船 神宮寺 舞鶴湊引揚記念公園 

    成相寺 天橋立 大江山酒呑童子の里 元伊勢外宮 

    氷室神社

第30回 北九州・長門路の旅 ・・・・・・・・・・・・・・212

    大濠公園能楽堂 筥崎宮 香椎宮 志賀島金印公園 

    桂の池跡

    英彦山神宮 湯布院温泉 宇佐八幡宮 柳が浦 赤間神宮 

    安徳天皇御入水の地 和布刈神社 門司が関跡

第31回 佐渡の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・226

    佐渡能楽の里 本間家能舞台 根本寺 正法寺 黒木御所

    大膳神社 妙宣寺 佐渡歴史伝説館 真野御陵 蓮華峰寺

    南仙峡遊覧船 長谷寺 清水寺 

第32回 北陸路の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・240

    前田利長公墓所 瑞龍寺(燭光能) 如意の渡 

    義経雨晴しの岩 田子藤波神社 埴生八幡宮 

    倶利伽藍古戦場 石川県立能楽堂 兼六園 白山比盗_社 

    那谷寺 山中温泉 尼御前岬 実盛首洗池実盛塚 

    安宅関址 多太神社

第33回 南紀の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・254

    玉津島神社・塩釜神社 得生寺 道成寺 闘鶏神社 

    清姫の墓 滝尻王子址 野中の清水・秀衡の桜 

    熊野本宮大社 忠度の墓 熊野速玉大社 徐福の墓 

    補陀落山寺 熊野那智大社・青岸渡寺 飛瀧神社・那智の瀧 

第34回 高野山・奈良・難波の旅 ・・・・・・・・・・・・268

    高野山(御影堂 金剛峰寺 奥の院) 葛城山・

    葛城一言主神社 長谷寺 三輪明神 在原神社 東大寺 

    氷室神社 仁徳天皇陵 住吉大社 松虫塚 四天王寺 

    江口の里・寂光寺 

第35回 木曽・紅葉狩の里・姨捨山を訪ねる旅 ・・・・・・282

    馬籠宿 寝覚の床 日義村(巴が渕 徳音寺 義仲館) 

    鬼無里村(松巌寺 文珠堂 内裏屋敷跡 春日神社) 

    さらしなの里 長楽寺・姨捨山 戸隠中社 戸隠宝光社 

    善光寺

第36回 福島、北関東めぐり ・・・・・・・・・・・・・・296

    医王寺 文知摺観音 観世寺(安達ヶ原) 釆女公園 

    須賀川牡丹園 安珍堂 殺生石・那須温泉神社 遊行柳

    玉藻前稲荷神社 那須神社 光丸山法輪寺 鬼怒川温泉

    日光東照宮 磯部稲村神社

第37回 近江・京都の旅 ・・・・・・・・・・・・・・・・310

    竹生島 彦根城博物館 多賀大社 義仲寺 三井寺 

    近江神宮 唐崎神社 日吉大社 比叡山延暦寺 

    下鴨神社 南禅寺 上賀茂神社 鞍馬寺 寂光院 

    三千院

第38回 源平の 兵が夢の跡 ・・・・・・・・・・・・・・328

    藤戸寺 屋島寺 志度寺 高砂神社 敦盛塚 

    一ノ谷合戦の碑 村上帝社 現光寺 須磨寺 松風村雨堂 

    真光寺 生田神社 昌林寺 大物主神社

第39回 古都鎌倉・箱根の旅 ・・・・・・・・・・・・・・338

    瀬戸神社 称名寺 和田城址の碑 和田義盛旧里の碑

    城ヶ島 鶴岡八幡宮 法華堂跡 頼朝の墓 土佐坊昌俊邸跡

    日蓮辻説法跡 安養院 遊行寺 城前寺 宗我神社 正眼寺

    曽我兄弟・虎御前の墓 箱根神社 城願寺

第40回 奥州・義経を偲びながら ・・・・・・・・・・・・348

    釣山公園の歴史 雲際寺 一首坂 長者が原廃寺跡 

    中尊寺 達谷窟毘沙門堂 毛越寺 義経堂 

    げいび渓船下り 塩釜神社 萬松寺・阿古耶の松 

    熊野大社 米沢・上杉神社・松岬神社・上杉城史苑 

    常信庵

あとがき ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・358 



資 料 編

1 全国大会、東北大会、関東甲信越大会、西日本(中国・四国)大会

  後の観光 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   1

2 本書収録要請(○印)と付近の主な謡蹟 ・・・・・・・   7

3 索 引 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・   41


 

          あ と が き


最近20年ほどの名所めぐりについては、「ガイドブック」「嘱託会報掲載の名所めぐり報告」が揃っているので、資料は豊富にあるが、それ以前のものについては「ガイドブック」はないか、あってもごく簡単なもので、唯一の資料は「嘱託会会報」に掲載された記事のみである。

また、会報掲載の記事も一人の方が書いたもの、数人で分担したもの、さらに参加者から感想を募ったものもあり、また、克明に書いている人、比較的簡単に書いている人等さまざまである。


これらの資料を全部網羅するとなると膨大な量になり、かえって読みにくくなると思い、次のような考え方でこれらの資料を活かしながら、筆者の独断と偏見で編集を試みた。

(1) あくまで謡蹟の説明を主眼とし、その他の史蹟、宿泊・昼食のこと等は最小

  限にとどめた。

(2) 各回とも見開きの左側に文章、右側に写真を掲げた。

(3) 各回とも冒頭に、実施年月日、参加人員、主要コースを掲げた。

(4) 訪ねた所の説明は、謡曲に関係のある所を主とし、所在地、関連の謡曲名

を掲げた。(平成の大合併で沢山の市町村が合併したが出来るかぎり新しい市 

  町村名を付記した)

(5) 謡蹟の説明は、ガイドブック、会報の記事から引用のこととし、筆者名が

  はっきりしているものは付記した。

(6) 写真は会報、ガイドブックに掲載のものは,鮮明に引用するのが困難なので、

  筆者が撮影したものを掲げ、撮影年月を付記した。


  また、参考までに資料篇として、次の資料を作成、添付した。

 ・全国大会、東北大会、関東甲信越大会、西日本(中・四国大会)後の観光

  各大会の翌日には観光を行うことが多く、その中には謡蹟も多くふくまれ

  ているので、コースのみであるが掲げてみた。

 ・本書収録謡蹟(○印)と付近の主な謡蹟

   本書に収録した所以外に、謡蹟は数限りなく存在する。私が訪ねた所で参

  考になりそうなものを一表にまとめてみた。

 ・索引 

   本文記載の謡蹟等については、五十音順と地域別二種類の索引を作成した。


一時期筆者も名所めぐりを担当、その縁で謡蹟めぐりに興味をもち全国各地の謡蹟を訪ね廻った。今回先輩たちの足跡をたどり、その感想を読んで誠に感慨深いものがあった。謡曲に興味を持たれた方は稽古ももちろん大切ですが、謡蹟を訪ねることにより一層興味が増すことは確実でございます。ぜひ本書を参考にあちこちを訪ねていただきたいものでございます。

     平成18年10月

               宝生流教授嘱託会 東京支部  高橋春雄

宝生流教授嘱託会40年間の 謡曲名所めぐり実録 (平成18年10月)

宝生流教授嘱託会40年間の 謡曲名所めぐり実録 (平成18年10月)
宝生流教授嘱託会40年間の 謡曲名所めぐり実録 (平成18年10月)
B5版 2冊で412頁



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