長昌寺

謡蹟めぐり  竹雪 たけのゆき

ストーリー

越後国の住人直井左衛門は、妻と離別して近くの長松に住まわせ、二人の子の姉を母の方に、弟の月若を自分の方に置きました。新たに妻を迎えた直井は、宿願のため参籠する間、月若のことを後妻に頼んで出掛けました。
その留守中、継母に虐げられた月若は家を出ようと思い、暇乞いに実母を訪ねます。そこへ継母から迎えが来て仕方なく月若は家に帰ります。継母は実母へ告げ口に行ったのであろうと腹を立て、月若のこそでを剥取り、薄着の月若に降り積もった竹の雪を払わせます。月若は厳しい寒さの中、家に入ることもかなわず、遂に凍死してしまいます。
その知らせを受けた実母と姉が、涙ながらに雪の中から月若を捜し出し、悲しみにくれていると、直井が帰宅して事の次第を知り、後妻の無情を共に嘆きます。すると「竹故消ゆるみどり子を、又二度返すなり」と竹林の七賢の声がして、不思議にも月若は生き返ります。親子は喜びあい、この家を改めて仏法流布の寺にしました。(「宝生の能」平成9年12月号より)

真行寺と長昌寺   新潟県上越市      (平16・3記)

JR直江津駅から海岸に向かって500メートルほど、上越市中央にある真行寺は、ワキ直井左衛門の邸跡と伝えられる。本堂の白壁が美しい。庫裡の玄関前には、謡曲「竹雪」に因み「長松」と名付けたと説明されている、10メートルほど横に枝のびた黒松がある。その松の下には自然石に「謡曲竹雪旧跡」と刻んだ碑が建っている。

真行寺 真行寺 上越市中央 (平6.10)

長松 長松 真行寺 (平6.10)

謡曲竹雪旧蹟碑 謡曲竹雪旧跡の碑 真行寺 (平6.10)

案内を乞うと快く招じ入れてくれ、内部の庭も拝観することが出来た。本堂や庫裡の前、また寺の中の庭もよく手入れされており、曲に出てくる竹林の面影はなく、月若が寒空に、ほころびた衣類を来て竹の雪を払い凍死したのを想像するのは困難である。

真行寺庭園 真行寺の庭 真行寺 (平6.10)

月若の母の実家は上越市小池にある長昌寺であるといわれる。かなり山奥の荒れた寺で、私が訪ねた時は人の気配はなかった。私は直江津からタクシーで行ったのだが、かなり時間がかかったような気がする。地図で真行寺と長昌寺との距離を測ってみたらおよそ20キロはあるようだ。月若は雪の山道をただ一人で母を訪ねてここまでたどり着き、また呼び戻されて元来た道を戻ったのである。

長昌寺 長昌寺 上越市小池 (平6.10)

祇園祭 孟宗山  京都市    (平16・3記)

曲中に「彼の唐土の孟宗は、親のため雪中に入り筍(たかんな)をまうく」とある。
京都市の祇園祭には沢山の山が出るが、その中に「孟宗山」があり、この一節のことを示しているのでその写真を掲げてみる。
その由来は中国の史話「二十四孝」に基づくもので、呉の国の孟宗が、病気の母の為に好物のたけのこを求めて、雪の竹やぶを歩き回り掘り当て母親に与えたところ元気を取り戻したという物語である。
山車の上部の傘や木々には雪が積っており、御神体の人形は唐人衣裳に蓑、笠をつけ、右手に雪のかぶった筍、左手には鍬を肩にかついで立っている。

孟宗山 祇園祭 孟宗山 京都市 (平13.7)


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