嵯峨の奥に住む西行法師が住吉明神に参詣し、とある家に宿を求めます。するとその家の老夫婦は、翁は秋の村時雨が好きで雨音を聞きたいので屋根を葺こうといい、姥は洩れ来る月影が見たいので屋根は葺くまいと言い争っています。
翁は「賤が軒端を葺きぞ煩ふ」とふと洩らした自分の言葉がそのまま歌の下句になったので、西行にこの歌の上句を求めます。西行は「月は漏れ雨はたまれととにかくに」詠んで歌を継いだので、老夫婦は深く感に打たれ喜んで法師に宿を貸し、歌物語などして眠ります。
夜更けて老人夫婦は姿を消しますが、しばらくして夢うつつの西行の元へ住吉明神が現れます。やがて神官の老人に住吉明神がのり移り、祝詞を上げ歌道の徳を賞して舞を舞います。神託を仰ぎ奉るがよいと言って住吉の神が上がり給うと、神官も元の人となって自分の家へと帰って行きます。(「宝生の能」平成12 年10月号より)
本曲のワキは西行法師で宿願の仔細あって住吉明神に参詣することとなっているが、本曲の舞台は住吉神社ではないようだ。しかし場所を特定することが困難なので、往時の面影を残すと思われる住吉神社境内の写真を掲げてみる。
住吉大社境内 大阪市住吉区 (平12.6)