謡蹟めぐり  邯鄲 かんたん

ストーリー

唐土蜀の国に住む若者虚生が人生に疑問を持ち、日々なすこともなくて唯茫然と暮らしていましたが、楚国に仏道の師がおられると聞き羊飛山へ赴く途中、邯鄲の里で一夜の宿を求めました。宿の女主は、仙人が置いていった邯鄲の枕に寝れば、夢の中に過去未来の悟りが得られると言うので、廬生は喜んでこの不思議な枕で昼寝の床につきます。
ここに楚国の帝の勅使が現れて廬生を起こし、譲位の勅を伝えます。そのまま都へ導かれて即位した虚生は満ち足りた栄華を味わいます。即位五十年の酒宴では舞童の舞いを見、自分も立って舞い興じますが、ここで全ての物が忽ちに消え失せ、廬生の夢は淡く覚めました。
宿の女主は夕餉の支度をととのえて待っています。長い筈の時間は栗の飯が炊ける間のわずかな時間だったと知り、始めは呆然としていた廬生、やがて人生のなんたるかを悟り、心安らかに故郷に帰るのでした。(「宝生の能」平成13年2月号より)

邯鄲の里 黄粱夢呂仙祠 中国河北省黄梁夢村 (平18・12記)

中国の謡蹟は残念ながらまだ訪ねていない。書物やインターネットで調べてみると、中国河北省邯鄲市の北10キロの黄梁夢村に 黄粱夢呂仙祠 があり、主人公の石像もあるようである。実際にここを訪ねた方の記録を二、三紹介のこととする。

小倉正久著 「謡曲紀行」   白竜社発行

「河北省邯鄲市の北十キロにある 黄粱夢村に、 黄粱夢呂仙祠がある。北宋王安石が吟じた詩で有名。道教の全真教の道観で、城内に八仙殿、鐘離殿、呂祖殿、廬生殿が建てられている。・・」とあり、廬生殿、廬生彫像その他数々の写真も添えられている。
本書には国内の謡蹟はもちろん、中国を舞台とする曲についても、この「邯鄲」のほか「咸陽宮」「項羽」「皇帝」「三笑」「昭君」「西王母」「天鼓」「枕慈童」「楊貴妃」など、中国を舞台とする曲の謡蹟についても詳しく紹介されている。中国の謡蹟を紹介したものとしては大変貴重な本と思うので、関心のある方には是非ご一読をおすすめする。

桜餅田楽の「南京と邯鄲(かんたん)の旅」

http://www6.nsk.ne.jp/~notosa/sakuramoti02.htm

「 午後は、黄粱夢呂仙祠と呼ばれている道教のお寺を見学した。ここは日本でも有名な成句になっている「邯鄲の夢」の生まれた地である。
「邯鄲の夢」は唐の時代に書かれた「枕中記」の物語の内容を言ったものだが、境内の一つの建物の内壁にはその物語が順を追って絵で描かれていて「邯鄲の夢」の意味するところが一目瞭然だった。「邯鄲の夢」とは栄枯盛衰のはかないことを喩えているのである。平家物語の無常観につながる世界かなあと思った。」

3000年の歴史の大地を歩く ― 邯鄲

http://www.china.co.jp/beijing/cmit/kantan.html

「 邯鄲の夢―黄梁夢呂仙寺 邯鄲黄梁夢呂仙寺は邯鄲市の北にあり、宋の時代に枕の中の記事によって建てられた一組の道教建築群である。・・盧生殿では夢を見る主人公は石像の形で横わたる。
彼は唐の時代、科挙試験で上京し、何回めの落第に満喫し、落ち込みの帰りの道を急いでいると、日が暮れたので、邯鄲の一つ旅館に泊まった。そのとき、旅館では栗のご飯を炊いていたところが、仙人の呂洞賓がちょうど傍にいた。盧生は出生できない悩みを訴えたが、呂洞賓は磁器の枕を渡し、すばらしい夢を見た。
夢の中でまず科挙試験に合格し、後、金持ちできれいなお嫁さんをもらった。また、皇帝様の御めがねにかなえ、総理大臣になった。子孫四世代ともに人間の栄華福貴を50年間極めた。
この時、馬屋の騾馬が吼えるので、びっくりして夢から醒めると、これは一切はただ夢で、自分はやはり貧しい書生で、さきほど炊いていた栗のごはんはまだ煮えきれいていない、盧生は人生の虚しさを悟り、出家して仙術を得て仙人になった。 」

黄梁夢 呂仙祠 こうりょうむ ろせんし

http://www.tabichina.com/taizen/kahoku/kahoku.htm

「 呂翁祠ともいい、邯鄲市の市街北方10kmにある。「黄梁夢」の故事は、唐代の沈既済(約750〜800)の小説『枕中記』に由来する。・・
祠の創建年代は不明であるが、県志には金代の元好問(1190〜1257)の題詩がのっている。敷地は1万3000平方メートル余りで、西側の祠門をはいると、八仙楼閣が目にはいる。南側に「蓮莱仙境」という大きな字のある影壁、北側に丹房・蓮池があり、池に橋が架かり、橋の中央に八角亭が建ち、さらに北に進むと三大殿に至る。前に鍾離殿、両側に鐘楼と鼓楼があり、中央が呂祖殿で、前方に拝殿、テラスの東西に配殿がある。後殿が盧生殿で、左右に回廊、殿前に碑碣がある。殿内の盧生の石彫の臥像は寝台とともに大きな青石を彫りあげたもので、寝台は高さ2尺・長さ5尺で、盧生は方形の枕をして横たわり、両足をやや曲げ、きりっとひきしまった顔つきで目をうすく閉じ、悠然たる表情をしている。北壁に黄梁夢の故事が描かれている。 」


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