夕顔の墳

謡蹟めぐり  半蔀 はしとみ

ストーリー

京の都は初秋の北山紫野の雲林院あたりです。ここに一夏安居(いちげあんご)の修行にいそしむ僧侶がありますが、安居も終りに近づいたので、今日は草花を取り集め、立花(りっか)供養を行っています。するとこの時草の中から一人の女が現れて一本の白い夕顔の花を立てて供養に加えます。僧が名を問うと、いまはこの世にない者、昔は五条あたりに住んだ夕顔であると言い残し、立花の陰に隠れ消えます。
僧が女の言葉を頼りに五条の何某の院と覚しきところへ来ると、夕顔の霊が草の半蔀を押しあけ姿を現します。夕顔の霊は、昔源氏の中将がここを訪れた際に、夕顔の花をさしあげたところ源氏が一首の歌を詠じ、それが縁で契りを結んだことなどを語りながら夜通し舞を舞っていますが、暁を告げる鶏の声や鐘の音が聞こえると名残り惜しげに半蔀の中に姿を消してしまいます。(「宝生の能」平成10年6月号より)

夕顔の墳  京都市下京区夕顔町 (平5・10記)

曲中に「五條あたりと夕顔の」とあるように、夕顔の住まいは五條あたりとされている。五條通りの五條大橋から西に向かって少し行った所を右に折れ狭い路地をしばらく歩くと左側に「夕顔の墳」と書かれた碑がある。
五條の大通りは道幅も広く車の往来も激しくて、とても源氏物語の古えも偲ぶことはできないが、一歩小路に入ると車の往来も困難と見えて割合に静かで、建物もかなり古いのが多い。草の半蔀を押し明けて夕顔が立ち出でてきてもおかしくはない雰囲気を残している。近くには「鉄輪」に関連の「鉄輪跡」の碑も見られた。

夕顔の墳 夕顔の墳 京都市下京区 (平3.9)


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