上路の里上路の山

謡蹟めぐり  山姥 やまうば

ストーリー

都に山姥の山廻りの曲舞(くせまい)で有名な百万(ひゃくま)山姥と呼ばれる白拍子がいました。
ある時百万山姥が、信濃国善光寺に参詣を思い立ち、従者を連れて旅に出ます。途中越後の上路(あげろ)という山路にさしかかったところで急に日が暮れてしまい、途方に暮れていると一人の女が現れ、一夜の宿を提供するからと山中の我が家へ一行を案内します。
家に着くとその女は、実は自分が山姥の霊であることを明かし、百万山姥が曲舞で名を馳せながら、その本人を心に掛けないことが恨めしい、と言います。ここで百万山姥の曲舞を聞いてこの妄執を晴らしたい、と歌の一節を所望してその姿を消します。
百万山姥が約束通り、山姥の曲舞を始めると真の山姥が姿を現します。そして本当の山姥の生き様を物語り、山廻りの様を見せますが、いつしか峰を翔リ、谷を渡って行く方知れず消え失せます。(「宝生の能」平成13年10月号より)

「山姥」の舞台 新潟県青海町   (平11・11記)

本曲のワキとツレの一行の歩いた道を辿ってみる。善光寺へお参りするため京都を出発した一行は滋賀県の琵琶湖を船で渡り、福井県敦賀市の有乳山、福井市の玉江の橋、福井県芦原町の汐越の松、石川県小松市の安宅の松、富山県小矢部市の砺波山を経て、越中と越後の境を流れる境川に着く。親不知の難所の近くである。現在は北陸から善光寺に行くには直江津から信越線経由が普通と思われるが、往時はこの親不知の難所を避けて上路の山を越えたのであろうか。境川からは山道となるので、一行は乗り物を降り歩いて上路(あげろ)の山に向う。

親不知 親不知 新潟県青海町 今は高速道路が海岸を走っている。(平6.10)

境川 境川 新潟県・富山県県境 (平6.10)

境川を遡ると上流は上路川となり、やがて上路の里に着きここで山姥に巡り会うこととなる。現在は山姥の里とも呼ばれているようである。山姥神社と称する小さな祠があり、近くには山姥が後に里人となって住んだという、山姥日向ぼっこの岩がある。

上路の里上路の山 上路の里と上路の山 新潟県青海町 (平6.10)

山姥神社 山姥神社 新潟県青海町上路 (平6.10)

日向ぼっこの岩 山姥日向ぼっこの岩 新潟県青海町上路 (平6.10)

また、昭和59年に建てられた立派な「山姥の里」の碑もあり、碑の台座には謡曲山姥の一節、「春は梢に咲くかと待ちし花を尋ねて山廻り、秋はさやけき影を尋ねて月見る方にと山廻り、冬は冴え行く時雨の雲の雪を誘ひて山廻り」が刻まれている。

山姥の里碑 山姥の碑 新潟県青海町上路 (平6.10)

本曲の主舞台山姥の洞は白鳥山の山頂に近い中腹にある由だが、険しい山路を6キロとのこと、訪ねるのは断念した。謡曲史跡保存会が立てた駒札には「白鳥山の山頂近くに山姥が住んだ「山姥の洞」があり、大きな「踊り岩」に覆われていて、満月の夜、その上で山姥が舞う姿が遙か麓から眺められたといいます。」と記されている。


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