矢島経島

謡蹟めぐり  鵺 ぬえ

ストーリー

旅僧、三熊野へ参詣し京へ上る道すがら、芦屋の里で一夜の宿を乞うと、里人は禁制の由をいい、田渡しの御堂に御泊りあれ、あの堂には光りものが出るという。僧が、その堂で夜をあかしていると、果して、何者とも知れず、うつお船に乗って現れ、頼政の矢先にかかって命を落とした鵺の亡心であると明かし、その時の有様を詳しく物語った。
近衛天皇の、仁平年間のこと、夜半頃東三條の森から黒雲むら立ち上って、御殿の上に覆うと思うと、主上は御脳とならせ給い、毎夜のことなので、さだめて変化の者であろうと、頼政を選んで、これを退治させられると、頭は猿、尾は蛇、足手は虎の如く、鳴く声は鵺に似ていた。と物語り、物凄い声を立てて浪間に消え失せた。
僧が読経して弔っていると、再び変化の姿で現れ、頼政に射伏せられた様を見せ、この功により頼政は御剣を賜ったが、自分はうつお舟に乗せられて、淀川に流され、浮洲に流れとまって浮かみもせず沈んでいるとてまた海へ入って行った。(宝生流旅の友より)

ぬえ塚  兵庫県芦屋市松浜町公園内  (平5・12記)

芦屋市は関西の高級住宅地として知られるが、かって在原業平も住んだ所とのことで、業平の別荘趾や業平橋、公光橋などもある。「ぬえ塚」は海岸近くの公園の中にある。
「 ぬえ塚の伝説
およそ800年ものむかし、源頼政が二条院にまねかれ、深夜に宮殿をさわがしていた怪鳥をみごとに射落とした。それは、ぬえ(鵺)といって、顔は猿、体はタヌキ、尾はヘビという奇妙な化鳥であった。その死がいをウツボ舟(丸木舟)にのせて桂川に流したところ、遠く大阪湾へ流され芦屋の浜辺に漂着した。浦人たちは恐れおどろき芦屋川のほとりに葬り、りっぱな墓をつくったという。ぬえ塚伝説は「摂陽郡談」「摂津名所図会」などに記されているが、古墳にまつわる伝説の一つと思われる。現在の碑は後世につくられたものである。
    昭和48年2月   芦屋市教育委員会  」

ぬえ塚2 鵺塚 芦屋市浜松町公園内 (平2.5)

ぬえ塚1 鵺塚 芦屋市浜松町公園内 (平2.5)

大阪市都島区島本3丁目にも「鵺堂」がある由である。このあたりなら、ウツボ舟に乗せられた鵺の死骸が漂着してもおかしくはない地形であったろう。
京都市上京区智恵院通丸太町下ル、二条城の北側の二条児童公園北にも「鵺大明神」があるとのこと。本曲では「東三条の林頭」とあるから場所的にも近い所である。「鵺池址」もあって、頼政が鵺を射止めて血に染まった矢の鏃を洗った池という。また、「東三条の林頭」は粟田口に通ずる東山三条の森ともいい、また中京区二条西洞院町の東三条院の森ともいう。
京都・大阪を訪ねる時の楽しみがまたまた増えた。

京都御所 紫宸殿    京都市上京区 (平10・2記)

頼政の鵺退治の舞台となったのは京都御所の紫宸殿。紫宸殿は京都御所の正殿で、即位や節会などの儀式を行うところである。春秋の2回しか公開されないので、なかなか機会がなかったが、平成8年4月ようやく念願を達成した。ちょうど桜の季節だったので左近の桜も満開で、右近の橘の緑との対比が素晴らしかった。

紫宸殿 京都御所 紫宸殿 京都市上京区 (平8.4)

矢島・経島 新潟県佐渡小木町 (平10・2記)

頼政が紫宸殿の怪物「ぬえ」を退治した時の矢は、佐渡小木町にある矢島の竹から作ったものといわれる。この矢島はたらい舟で名高い小木港と近くにあり、経島と続いている。経島は日蓮上人の赦免状を持って佐渡に渡ろうとした弟子の日朗が漂着し、読経して一夜を明かしたところといわれ、ともに謡曲に由来する名の島である。

矢島経島 矢島・経島 佐渡小木町 (平7.6)

鵺大明神と鵺池 京都市上京区二条公園北 (平19・3記)

京都市上京区NHK放送局近くの二条公園には鵺池がある。頼政が鵺を射止めて血に染まった鏃をこの池で洗ったという。鵺池の碑が建てられ傍らには鵺大明神が祀られている。

鵺池と碑 鵺池と鵺池の碑 京都市上京区 (平10.4)

鵺塚と母恩寺 大阪市都島区都島 (平19・3記)

大阪の都島、淀川の近くにも鵺塚がある。鵺の死骸がここに流れ着いたが、祟りが続くので村人が塚を建てて弔ったという。近くの母恩寺には鵺を射た頼政の鏃が所蔵されていたとのこと。

鵺塚 鵺塚 大阪市都島 (平14.9)

母恩寺 母恩寺 大阪市都島 (平14.9)

神明神社 京都市下京区神明町 (平19・3記)

この神社にも頼政の鏃(やじり)が二本伝わっているとのことである。神社の由緒には次のように記されている。
「 近衛帝の時、頭は猿、尾は蛇、手足は虎の「ぬえ」という怪獣が夜毎空に現われ都を騒がせた。これを退治せよとの命を受けた源三位より昌は、神明社に祈願をこめ、みごと怪獣を退治したその御礼に奉納した弓箭である。「やじり」は今でも祭礼の時に飾られる 」

神明神社 神明神社 京都市下京区 (平8.4)

来迎寺 彦根市本町 (平19・3記)

境内の弓矢八幡は頼政が鵺退治の矢を納めた所という。

来迎寺 来迎寺 彦根市本町 (平13.11)


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